「人事マネージャーとして10年近くやってきたが、この先どうなるのか」 「CHROを目指しているが、何が足りないのか」 「人事部長とCHROは何が違うのか、どう越えるのか」
人事キャリアを積んできた方が必ずぶつかる壁があります。それは**「人事のプロ」から「経営のパートナー」への転換**です。
本記事では、人事マネージャーからCHROになるための具体的なキャリアパスと、必要なスキル・経験・マインドセットを徹底解説します。
1. 人事マネージャーとCHROの本質的な違い
人事マネージャーとCHROの違いは、役職や年収の差ではありません。思考の起点が根本的に異なります。
人事マネージャーは「人事部門の課題」から思考を始めます。採用目標を達成するにはどうするか、評価制度の運用をどう改善するか、離職率をどう下げるか。すべて人事部門の内側から発想します。
一方CHROは「事業の課題」から思考を始めます。3年後に新規事業を立ち上げるためにどんな人材が必要か、競合に勝つためにどんな組織設計が必要か、M&A後の統合をどう進めるか。すべて経営の視点から人材・組織を設計します。
この思考の起点の違いが、人事マネージャーとCHROを分ける最大の差です。どれだけ人事の専門知識があっても、経営視点で思考できなければCHROにはなれません。
2. CHROになるまでの一般的な年数・ステップ
CHROになるまでの典型的なキャリアステップは以下の通りです。
ステップ① 人事担当者(1〜3年) 採用・労務・研修など人事業務の基礎を習得する期間です。特定の領域に偏らず、人事業務の全体像を掴むことが重要です。
ステップ② 人事リーダー・係長クラス(3〜5年) チームをまとめながら、採用戦略や制度設計の一部を担い始める時期です。ここで「運用する人」から「設計する人」への移行が始まります。
ステップ③ 人事マネージャー(5〜10年) 人事部門全体または特定領域(採用・HRBP・制度設計など)のマネジメントを担います。この段階で経営視点を意識的に取り込めるかどうかが、その後のキャリアを大きく左右します。
ステップ④ 人事部長・HRディレクター(8〜15年) 人事部門全体を統括し、経営会議に参加し始める段階です。ここでCEOや他の役員との信頼関係を築けるかどうかが、CHROへの最後の関門になります。
ステップ⑤ CHRO 経営会議の正式メンバーとして、人材・組織戦略を経営レベルで統括します。
一般的には人事キャリアをスタートしてから10〜20年でCHROに到達するケースが多いですが、スタートアップや変化の速い企業では8〜10年でCHROになるケースも増えています。
3. 人事マネージャーが乗り越えるべき3つの壁
壁① 「人事の専門家」から「経営の言語を話せる人」への転換
人事マネージャーが最初にぶつかる壁は、経営会議で通用する言語を身につけることです。
人事の言語は「エンゲージメントスコアが上がった」「離職率が下がった」です。経営の言語は「人材投資のROIが●%改善した」「この組織設計により営業生産性が●%向上する」です。
同じ事実を伝えるにしても、経営言語で話せるかどうかで、CEOや役員から受ける信頼が全く変わります。財務三表を読む習慣をつけ、人事施策を必ず数値で語る癖をつけることが第一歩です。
壁② 「部門最適」から「全社最適」への視座の転換
人事マネージャーは自部門のKPIを達成することが仕事です。しかしCHROは時に、自部門の効率を犠牲にしてでも全社の利益を優先する判断をしなければなりません。
例えば採用コストを下げることが人事部門のKPIであっても、事業成長のために採用コストを大幅に増やす意思決定をCEOに提案できるかどうか。この全社最適の視点を持てるかどうかが、部長どまりかCHROになれるかの分岐点です。
壁③ 「現場の信頼」と「経営の信頼」を同時に獲得する
CHROは現場の従業員からも信頼され、かつ経営陣からも信頼される必要があります。この両立が非常に難しい。
経営寄りになりすぎると現場から「会社の犬」と見られ、現場寄りになりすぎると経営から「人事は経営をわかっていない」と見られます。この綱渡りを意識的にこなせる人が、CHROとして長期的に機能します。
4. 壁を乗り越えるための具体的な方法
経営言語を身につける3つの方法
① 決算説明会の資料を読む習慣をつける 自社だけでなく、競合他社の決算説明会資料を毎四半期読むことで、経営者がどんな指標を重視しているかが体感できます。最初は難しく感じても、3ヶ月続けると経営の言語が自然に入ってきます。
② 人事施策を必ず金額で語る 「採用コストが下がった」ではなく「年間●万円のコスト削減になった」。「離職率が下がった」ではなく「離職1人あたりのコストが平均●万円とすると、●人分の●万円を削減できた」という形で、常に金額換算する習慣をつけます。
③ 社外の経営者・CFOと話す機会を作る 人事の人間同士で話していても経営視点は身につきません。意識的に経営者やCFOと話す機会を作り、彼らが何を重視しているかを肌で感じることが最速の学習方法です。
全社最適の視点を身につける方法
人事部門のKPIだけを追っていると全社最適の視点は身につきません。おすすめなのは**「もし自分がCEOだったら」という問いを日常的に立てること**です。
今直面している人事課題について、CEOの立場から見たらどう見えるか、どんな優先順位になるか。この思考実験を繰り返すことで、徐々に全社最適の視点が養われます。
現場と経営の両方から信頼を得る方法
現場の信頼を得るには「現場の声を聞いている」という姿勢を示し続けることです。月1回でもいいので現場の従業員と1on1を実施し、現場のリアルを把握している人事として認識されることが重要です。
経営の信頼を得るには「数字で語れる人事」として自分をポジショニングすることです。役員会議での発言機会があれば、必ず定量データを持ち込み、施策の効果を数値で示す習慣をつけてください。
5. CHROになるために積むべき経験
人事マネージャーがCHROを目指すなら、意識的に以下の経験を積む必要があります。
① 事業部門との協働経験(HRBP) 人事部門の中だけにいては経営視点は身につきません。HRBPとして特定の事業部門に深く関わり、事業課題を人材・組織の視点から解決する経験が不可欠です。
② 組織変革・制度設計の主導経験 既存制度の運用ではなく、ゼロから制度を設計した経験、あるいは既存制度を大きく変革した経験が必要です。「何を変えたか」「どんな抵抗があったか」「どう乗り越えたか」を具体的に語れることがCHROの条件です。
③ 経営会議・役員との接点 人事マネージャーの段階から、意識的に経営会議や役員との接点を増やすことが重要です。報告の機会があれば積極的に手を挙げ、役員の思考回路を間近で学ぶことがCHROへの近道です。
④ M&AまたはIPO関連の人事経験 組織統合(PMI)や上場準備における人事制度整備の経験は、市場価値を大きく高めます。これらのイベントは通常のオペレーションとは全く異なる高度な判断を求められるため、経験者は希少です。
6. 今の会社でCHROを目指すか、転職でCHROを目指すか
これは多くの人事マネージャーが悩む問いです。それぞれのメリットとデメリットを整理します。
今の会社で目指す場合 メリットは社内の信頼関係・文化・事業理解をすでに持っていること。デメリットは上のポジションが詰まっている場合、どれだけ実力があっても機会が来ないことがあります。
転職でCHROを目指す場合 スタートアップや変革期の企業は、外部からCHROを招聘するケースが多く、機会が生まれやすいです。ただし社内政治や文化を一から構築する必要があり、最初の1〜2年は信頼獲得に相当のエネルギーを使います。
判断基準は一つで、**「今の会社で3年以内にCHROになれる可能性があるか」**です。可能性がないなら転職市場に出ることを真剣に検討すべきです。人事キャリアにおいて、機会を待ち続けることは最大のリスクです。
7. CHRO候補として評価される人材の特徴
採用企業やヘッドハンターがCHRO候補として評価する人材には共通の特徴があります。
CEOの言葉で話せる:人事施策を事業インパクトで語れる人。「エンゲージメントが上がりました」ではなく「この施策で離職率が●%下がり、採用コストが年間●万円削減できました」と話せる人です。
変革の主語が「私」である:「会社が変わった」ではなく「私が主導して変えた」という経験を持つ人。組織変革において自分が起点になった経験の有無が、評価の大きな分岐点になります。
修羅場経験がある:リストラ、組織再編、労使交渉、M&A統合など、困難な局面を乗り越えた経験を持つ人は高く評価されます。CHROは必ず困難な意思決定を求められるため、修羅場経験の有無を採用側は重視します。
7. 人事マネージャーがCHROに近づくための具体的なアクション
最後に、明日からできる具体的なアクションを提示します。
① 財務三表を毎月読む習慣をつける 自社の決算短信・有価証券報告書を毎四半期読むことから始めてください。人事施策を財務インパクトで語れるようになるための基礎体力です。
② 社内で「人事✕事業」の接点を増やす HRBPの機会がなくても、事業部門のミーティングに積極的に参加し、事業課題を肌で感じる機会を作ってください。
③ CHROや人事役員との接点を持つ 現役のCHROや人事役員と話す機会を意識的に作ることが重要です。CHRO Naviのような専門メディアやコミュニティを活用して、ロールモデルとなる人物の思考回路を学んでください。
④ 自分の「変革ストーリー」を言語化する 過去の経験の中から「自分が主導した組織・制度の変革」を3つ書き出してください。それがCHRO転職の面接で最も問われる内容であり、今から言語化しておくことで転職活動の質が大きく変わります。
まとめ:CHROへの道は「経営視点の獲得」に尽きる
人事マネージャーからCHROになるために必要なことは、人事の専門知識をさらに深めることではありません。経営の視点を獲得し、経営の言語で話せるようになることです。
そのためには意識的な経験の積み方と、ロールモデルとなるCHROとの接点が不可欠です。
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