「そろそろCHROが必要な気がするが、今のタイミングが正しいのか」
「CHROを設置するかどうか、どう判断すればいいのか」
「CHROを採用して失敗しないためには何を準備すればいいのか」
人的資本経営の時代において、CHROの設置は一部の大企業だけの話ではなくなっています。しかし「いつ・どんな人を・どう採用するか」を間違えると、CHROが機能せず組織が混乱するリスクがあります。
本記事では、経営者がCHROを設置する際の判断基準・タイミング・失敗しない採用方法を徹底解説します。
1. CHROが必要になるサインとは
経営者がCHROの必要性を感じるのは、多くの場合以下のサインが出始めたタイミングです。
サイン① 採用がうまくいかなくなってきた
事業の成長に採用が追いつかない、採用してもすぐに辞める、欲しい人材が取れない。これらは人事戦略を経営レベルで統括するCHROが必要なサインです。
採用の問題は表面上の問題であることが多く、その背後には採用ブランディングの弱さ・組織文化の問題・報酬競争力の低さなど、複合的な課題が隠れています。これらを経営視点で統合的に解決できるのがCHROです。
サイン② 離職率が上がってきた
優秀な人材が辞めていく、特定の部門で離職が集中している、マネージャーへの不満が増えている。これらは組織文化・評価制度・マネジメントの問題が複合的に絡み合っているサインです。
離職率の上昇を放置すると、採用コストの増大・組織の疲弊・エンゲージメントの低下という悪循環に陥ります。CHROがこの悪循環を断ち切る役割を担います。
サイン③ 人事部長が経営会議で機能していない
人事部長が経営会議で発言できていない、CEOが人事部長の意見を経営判断に反映していない、人事が「管理部門」として位置づけられている。これらはCHROが必要なサインです。
人事が経営の中心議題にならない限り、人材・組織への投資は後回しにされ続けます。
サイン④ 組織が急拡大している
社員数が50人・100人・300人といった節目を超えるタイミングで、組織の複雑性が急激に増します。それまで経営者が直接管理できていた組織文化・人材の質・コミュニケーションが、急拡大によって維持できなくなります。このタイミングがCHROを設置する最適なタイミングの一つです。
サイン⑤ 人的資本情報の開示対応ができていない
上場企業または上場準備中の企業で、人的資本情報の開示対応が後手に回っている場合、CHROの設置が急務です。投資家・機関投資家からの人材戦略への注目が高まる中、開示対応の遅れは企業評価に直結します。
2. CHRO設置の最適なタイミング
CHROを設置する最適なタイミングは、企業のフェーズによって異なります。
スタートアップの場合
シリーズB〜Cのタイミングが最適です。社員数が30〜50人を超え、創業メンバーだけでは組織を維持できなくなるフェーズです。
このタイミングでCHROを設置することで、急拡大する組織の文化形成・採用基準の整備・評価制度の設計を体系的に進められます。シリーズD以降になってからでは、すでに文化の問題や採用の歪みが積み上がってしまっていることが多く、修正コストが大きくなります。
中堅企業の場合
組織変革が必要になったタイミングが最適です。ジョブ型雇用への移行・DX推進に伴う人材戦略の見直し・M&A後の組織統合など、大きな変革が必要な局面でCHROを設置することで変革推進力を組織に注入できます。
大手企業・上場企業の場合
人的資本情報の開示義務化への対応と、後継者計画の整備が差し迫っているタイミングが最適です。また新中期経営計画のスタートに合わせてCHROを設置し、人材戦略を中計と統合するケースも増えています。
3. CHRO設置前に経営者が準備すべきこと
CHROを設置する前に、経営者が準備すべきことが3つあります。この準備なしにCHROを採用しても、機能しないリスクが高まります。
準備① CHROに何を期待するかを明確にする
「なんとなく人事を強化したい」という曖昧な期待でCHROを採用しても、CHROは機能しません。CHROに期待することを具体的に言語化することが最初のステップです。
「3年以内にエンゲージメントスコアを業界平均以上にしたい」「ジョブ型雇用への移行を2年で完了させたい」「IPOまでに人事制度を整備したい」など、具体的なミッションを設定してください。
準備② CHROに与える権限を決める
CHROが機能するためには、適切な権限が必要です。経営会議への参加権限・人事予算の決裁権・全社の組織設計への関与権限を明確に定義したうえで採用してください。
権限が曖昧なまま採用すると、「名ばかりCHRO」になるリスクがあります。
準備③ CEOとCHROの関係を設計する
CHROはCEOのパートナーとして機能します。CEOとCHROが定期的に1on1する仕組み・経営会議での役割・意見が対立したときの意思決定プロセスを事前に設計しておくことが重要です。
4. CHROに任せるべきこと・任せてはいけないこと
任せるべきこと
人材戦略の立案と経営戦略との統合、組織変革・文化形成の主導、採用戦略の統括、評価・報酬制度の設計、人的資本情報の開示対応、経営幹部・後継者の育成計画はCHROに任せるべきです。
任せてはいけないこと
経営の方向性の決定はCEOの仕事です。CHROは人材・組織の観点から経営に貢献しますが、事業戦略の最終決定はCEOが行います。
また全社のコミュニケーションをCHROだけに任せることも危険です。組織文化の形成はCHROが主導しますが、CEOが直接社員に語りかける機会を減らしてはいけません。
5. CHRO採用で失敗しないための5つのポイント
ポイント① ミッションの明確化
前述の通り、CHROに期待するミッションを具体的に定義してから採用活動を始めることが最重要です。ミッションが曖昧なまま採用すると、入社後に「何をしてほしいのか」が噛み合わずに機能不全に陥ります。
ポイント② スキルと文化フィットの両方を評価する
CHRO採用では、スキル・経験と自社の文化・フェーズへのフィット感の両方を評価することが重要です。大企業での変革経験が豊富でも、スタートアップのスピードと混乱に対応できないケースがあります。逆にスタートアップ経験しかない人材が大企業の政治・ステークホルダーマネジメントに苦労するケースもあります。
ポイント③ CEOとの面接に時間をかける
CHROの採用面接では、CEOとの対話に最も多くの時間をかけてください。CHROとCEOのケミストリーが、CHROの機能度を最も大きく左右します。スキルではなく「この人と一緒に経営できるか」という視点で評価することが重要です。
ポイント④ リファレンスチェックを徹底する
CHRO候補のリファレンスチェックでは、前職の上司・同僚・部下の3方向から確認することが重要です。特に「変革を主導したときに周囲はどう反応したか」「困難な状況でどのようなリーダーシップを発揮したか」を具体的に確認してください。
ポイント⑤ 専門エージェントを活用する
CHRO採用は一般の採用エージェントではなく、人事・HR領域に特化したエージェントを活用することをお勧めします。CHRO候補のネットワーク・非公開での転職意向者へのアクセス・CHRO採用の面接設計など、専門エージェントでなければ提供できないサポートがあります。
6. 内部昇格vs外部招聘、どちらが正解か
CHROを内部昇格させるか、外部から招聘するかは経営者が悩むポイントです。それぞれのメリット・デメリットを整理します。
内部昇格のメリット・デメリット
メリット:社内の信頼関係・文化・事業への理解がある。既存の人事部門との摩擦が少ない。移行がスムーズ。
デメリット:変革推進力が弱くなりがち。「人事部長の延長」になりやすい。外部の知見・ネットワークが入ってこない。
向いているケース:組織が安定していて、現状の延長線上での強化が目的の場合。内部に明確なCHRO候補がいる場合。
外部招聘のメリット・デメリット
メリット:外部の知見・変革推進力・ネットワークを即座に取り込める。変革へのコミットメントが明確。
デメリット:社内文化・政治の理解に時間がかかる。既存の人事部門との摩擦が起きやすい。最初の1〜2年は信頼構築に時間がかかる。
向いているケース:大きな変革が必要な局面。社内にCHRO候補がいない場合。外部の知見を取り込みたい場合。
7. CHRO採用後の最初の90日間でやるべきこと
CHROを採用したら、最初の90日間が最も重要です。経営者としてCHROの立ち上げを支援するためにやるべきことを整理します。
最初の30日間
CEOとCHROの定期1on1を週1回設定してください。CHROが全役員・部門責任者・人事スタッフと1on1できる機会を積極的に設けることが重要です。この期間はCHROがインプットに集中できる環境を作ることが経営者の役割です。
31〜60日目
CHROが経営会議で課題の優先順位を提案できる機会を設けてください。この提案に対してCEOが真剣に向き合い、フィードバックを返すことで、CHROは「自分の提案が経営に届いている」という実感を持てます。
61〜90日目
CHROが主導する最初の変革プロジェクトをスタートさせてください。小さくてもいいので「CHROが主導した施策」の実績を作ることが、社内での信頼構築を加速させます。
まとめ:CHROの設置は「いつか」ではなく「今」判断する
人的資本経営の時代において、CHROの設置を先送りするコストは年々大きくなっています。採用難・離職率上昇・人的資本開示への対応遅れ。これらの問題は、CHROなしに解決することがますます難しくなっています。
「そろそろ必要かもしれない」と感じているなら、それがCHROを設置するタイミングです。
CHRO Naviでは、経営者・人事責任者向けのCHRO採用支援を行っています。候補者の探索から面接設計・条件交渉まで、専門的にサポートします。まずはお気軽にご相談ください。

