「HRBPとして5年やってきたが、この先どうなるのか」 「HRBPからCHROになれるのか」 「HRBPと人事マネージャー、どちらがCHROへの近道なのか」
HR領域でキャリアを積んでいる方が必ずぶつかる疑問です。
本記事では、HRBPとCHROの違い、HRBPからCHROへのキャリアパス、転職市場での評価まで徹底解説します。
1. HRBPとは何か
HRBP(Human Resources Business Partner)とは、特定の事業部門に深く関与し、その部門の経営課題を人材・組織の視点から解決する人事のスペシャリストです。
従来の人事担当者が人事部門の中で業務を行うのに対し、HRBPは事業部門のマネージャーや経営幹部と直接連携しながら、採用・評価・組織設計・人材育成などを事業の成長に直結する形で推進します。
HRBPの主な業務は以下の通りです。
- 担当事業部門の採用戦略立案・実行
- 組織課題の特定と解決策の提案
- 評価制度の運用・改善
- マネージャー層へのコーチング・支援
- 人材育成・リテンション施策の設計
- 経営幹部へのHRアドバイザリー
HRBPはもともと外資系企業で広く普及した概念ですが、近年は日本企業でも急速に導入が進んでいます。特にDX推進や組織変革を進める企業が、事業部門に深く入り込めるHR人材として積極的に採用しています。
2. CHROとは何か
CHRO(Chief Human Resources Officer)とは、人材・組織戦略を経営レベルで統括する最高人事責任者です。CEO・CFO・COOと並ぶCクラスの一員として、企業全体の人材戦略を設計・実行する責任を持ちます。
CHROの主な役割は以下の通りです。
- 全社人材戦略の立案
- 組織設計・変革の主導
- エグゼクティブ報酬設計
- 後継者計画(サクセッションプラン)
- 企業文化改革
- 人的資本情報の開示対応
- CEOへの戦略的アドバイザリー
CHROとHRBPの最大の違いは、対象範囲と権限の大きさです。HRBPが特定の事業部門を担当するのに対し、CHROは企業全体の人材・組織戦略を統括します。
3. HRBPとCHROの決定的な違い
HRBPとCHROは似ているようで、根本的に異なります。以下の3つの観点から整理します。
① 思考の起点の違い
HRBPの思考の起点は「担当事業部門の課題」です。この事業部門の採用をどう強化するか、このチームのエンゲージメントをどう上げるか、このマネージャーをどうサポートするか。担当部門の成功が最優先です。
CHROの思考の起点は「企業全体の価値向上」です。どの事業に人材を集中投下すべきか、M&A後の組織統合をどう進めるか、10年後の経営を担う人材をどう育てるか。常に企業全体の視点で考えます。
② 権限と責任の違い
HRBPは担当部門への提案・支援が主な役割で、最終的な意思決定権は事業部門の責任者やCHROにあります。
CHROは経営会議のメンバーとして、人材・組織に関する最終意思決定権を持ちます。予算決裁権、採用・解雇の最終承認、報酬制度の設計権限など、企業の根幹に関わる権限を持つのがCHROです。
③ ステークホルダーの違い
HRBPの主なステークホルダーは担当事業部門のマネージャーや従業員です。
CHROの主なステークホルダーはCEO・取締役会・投資家です。人的資本情報の開示対応や、投資家向けのIR活動における人材戦略の説明など、経営の外側に向けた発信も重要な仕事になります。
4. HRBPからCHROになるキャリアパス
HRBPはCHROへの最有力ルートの一つです。事業部門との深い関与を通じて経営視点を養えるHRBPの経験は、CHROに求められるスキルと高い親和性があります。
ステップ① シニアHRBP・HRBPリード(HRBP歴3〜5年)
複数の事業部門を担当するか、大規模な事業部門のHRBPとして、より高度な組織課題に取り組む段階です。ここでCEOや役員クラスと直接やりとりする経験を積めるかどうかが、その後のキャリアを大きく左右します。
ステップ② HRディレクター・人事部長(HRBP歴5〜8年)
複数のHRBPを束ねるか、人事部門全体のマネジメントを担う段階です。ここで全社的な人事戦略の設計に関わる経験を積み、経営会議への参加機会を増やすことが重要です。
ステップ③ CHRO(HR経験10〜15年)
経営会議の正式メンバーとして、全社の人材・組織戦略を統括します。HRBPからCHROになる場合、最大の強みは「事業の言語で話せること」です。事業部門の課題を深く理解しているHRBP出身のCHROは、CEOから高い信頼を得やすい傾向があります。
HRBPからCHROになるための最短ルート
HRBPからCHROへの最短ルートは、スタートアップへの転職です。シリーズB〜C以降の成長期スタートアップは、HRBPとCHROの境界線が曖昧なことが多く、HRBP経験者が実質的にCHROの役割を担うケースが増えています。
「CHROという肩書きを得ながら、CHROの仕事を経験する」という逆算的なキャリア設計が、スタートアップでは可能です。
5. HRBPの転職市場と年収
転職市場での需要
HRBPの需要は現在、非常に高い水準にあります。特に以下のような企業からの需要が急増しています。
DX推進中の大手企業:テクノロジー人材の採用・定着・育成を事業部門に寄り添いながら推進できるHRBPへの需要が急増しています。
グローバル展開中の企業:海外拠点との連携や、グローバル基準の人事制度導入を担えるHRBP経験者は特に希少で、高い評価を受けます。
スタートアップ・ベンチャー:組織拡大フェーズで、採用から文化形成まで幅広く担えるHRBP人材への需要が高まっています。
年収レンジ
HRBPの年収は経験・企業規模によって大きく異なります。
スタートアップ(シリーズB〜C) 年収600万〜1,200万円+ストックオプション
中堅上場企業 年収800万〜1,500万円
大手上場企業 年収1,000万〜2,000万円
外資系企業 年収1,200万〜2,500万円
HRBPは一般的な人事担当者と比較して、年収水準が高い傾向があります。事業部門と経営をつなぐ高度な役割であることが、市場での評価に反映されています。
6. HRBPとして市場価値を高める方法
HRBPとして転職市場で高く評価されるためには、以下の3点が重要です。
① 「事業インパクト」で語れるようにする
HRBPとして最も評価されるのは、人事施策が事業成果に直結した経験です。「エンゲージメントスコアが上がった」ではなく「エンゲージメント施策により離職率が●%低下し、採用コストが年間●万円削減された」という形で、事業インパクトを数値で語れることが市場価値を大きく高めます。
② 担当した事業の多様性を広げる
一つの事業部門だけでなく、異なる業種・規模・ステージの事業部門を担当した経験が評価されます。スタートアップ的な事業部門と大企業的な事業部門の両方を経験していると、転職市場での幅が大きく広がります。
③ 経営幹部との協働実績を作る
HRBPとして経営幹部(CEO・CFO・事業責任者)と直接協働した実績は、CHRO候補としての評価に直結します。経営幹部との接点が生まれる機会があれば積極的に関与し、その実績を具体的に語れるようにしておくことが重要です。
7. HRBP経験者がCHROになるために必要なこと
HRBPの経験はCHROへの強力な武器になりますが、そのままではCHROになれない壁があります。
壁①:全社視点の欠如
HRBPは担当部門の専門家であるがゆえに、全社視点が弱くなりがちです。CHROになるためには、担当部門の外側、つまり全社の人材・組織課題を俯瞰できる視点が必要です。
解決策は、意識的に他部門のHRBPや経営企画との接点を増やし、全社の課題を把握する習慣をつけることです。
壁②:財務・投資家視点の不足
HRBPは事業部門との協働が中心のため、財務・IR・投資家視点が弱くなりがちです。CHROには人的資本情報の開示対応など、投資家に向けた発信が求められます。
解決策は、自社の決算説明会資料を毎四半期読み込み、投資家が人材戦略のどこを評価しているかを把握することです。
壁③:政治力・ステークホルダーマネジメント
CHROは経営会議で予算と権限を勝ち取るために、高度な政治力が必要です。HRBPとして事業部門内での調整力は養われていますが、経営会議レベルのステークホルダーマネジメントはまた別のスキルです。
解決策は、経営会議への参加機会を意識的に増やし、役員レベルの意思決定プロセスを間近で学ぶことです。
まとめ:HRBPはCHROへの最強の入口
HRBPの経験は、CHROになるための最も強力なバックグラウンドの一つです。事業の言語で話せること、現場と経営をつなぐ視点を持つこと、これらはCHROに不可欠なスキルであり、HRBPとしての経験から自然に身につきます。
あとは全社視点・財務視点・政治力を意識的に補強することで、CHROへの道は大きく開けます。
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